#7 さだまさし『線香花火』

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8月も下旬に入りまだ暑さは続くものの、夏がそろそろ帰り支度をしている気配を感じるこの頃ですね。

夏の風物詩といえば花火です。会社勤めでイベントを運営していた頃は、花火大会はもちろん夏祭りのフィナーレにも花火はつきもの……という訳で、真下から花火を見上げること年に十数回はありましたが、今年は何かバタバタと忙しく、一度も見ずに終わりそうです(汗)。

前回、前々回とグレープを取り上げましたが、さだまさしさんと花火、というと思い出される曲は『線香花火』。
この曲、グレープを解散してさだまさしとしてソロデビューした時のシングル曲なんです。

さださんはグレープを解散した後しばらく静養、小椋佳さんのようにサラリーマンとして安定した仕事に就きつつ音楽活動をしようと目論んだのですが、入社希望の放送局からは「いやいや、さださんはソロで音楽をやるべきですよ」と断られ、グループを組もうと声をかけたグレープ時代のバックミュージシャン・渡辺俊幸さんには「プロデュースするからソロでやりなよ」と言われてしぶしぶ(?)のソロデビューだったようです。でも結果的には、ソロで活動を始めたことで様々なヒット曲に恵まれ、今日のさだまさしがあるのですから、周りの皆さんの慧眼たるや恐るべし、です。

話を曲に戻して、『線香花火』。この曲はセールス的にはもうひとつだったので、ソロのデビュー曲はセカンドシングルでヒットした『雨やどり』だと思っている方も多いのではないかと思います。

まだ付き合い始めてそれほど時間が経っていない、初々しい感じの男女が登場人物です。
「きみ(女性)」は浴衣を着ていて、二人は空を眺めて流れ星を見ては手を合わせたり、「ぼく」が星座の名前を教えたりしながら、線香花火を楽しんでいます。

ひとつふたつみっつ 流れ星が落ちる そのたびきみは胸の前で手を組む

よっついつつむっつ 流れ星が消える 君の願いは さっきからひとつ
(『線香花火』さだまさし)

「きみ」は小さな声で「いつ帰るの」ときくとあるので、おそらく遠距離で付き合っている彼女が地元、彼氏が遠くに住んでいるのかな、と推察してみました。

「歩く万葉集」と呼ばれる(私だけ?)さださんですが、同時に「歩く歳時記」でもあるさださんのリリカルな言葉選びは、この曲にもおおいに発揮されていて、「流れ星」「カシオペア」「白鳥座」「送り火」「浴衣」「ホタル」「露草模様」など夏の情緒あふれる言葉が次々と登場します。 

※ちなみにさださんは、普通は「作詞」と表現するところを敢えて「作詩」と表現しています。ご本人の説明は見つかりませんでしたが、そこにはメロディーをつけることをを前提とした「詞」だけではない、独立した表現としての「詩」であるというご本人のこだわり、矜持のようなものを感じることができます。

曲については、アコースティックギターの音色が美しいイントロから始まります。コードはマイナー(哀しい曲調)コードで、リズムはスリーフィンガー調なのですが、ピックで弾いていると思われるのでアルペジオでしょうか。ハンマリングオン、ハンマリングオフという、弦を指で叩くようにして音程を変えるテクニックが心地よく切なく、より情感を引き立てています。

まだ恋人同士になって間もないと思われる二人が、帰省してお盆の晩を過ごす……とりわけ悲しいシチュエーションではないのですが、全体を通してマイナーなもの寂しいトーンになっているところが聴く人の心を少しよるべない感じにさせます。そして曲の終わりは、

揺らしちゃ駄目だよ いってるそばから
火玉がぽとりと落ちて ジュッ
(『線香花火』さだまさし)

あらあら……彼女は火玉を落として消してしまいました。
さださんの歌によく出てくる、ちょっとドジな女の子(例えば『朝刊』の奥さんはカラスミをわざわざ煮て駄目にしたりします)というユーモアと捉えるのが正解なのでしょうが、この曲のトーンで歌われると、二人の将来に暗雲が立ち込めたのかな?なんて不安に襲われたりもします。
(グレープの『ほおずき』では彼女の下駄の鼻緒が切れて、その後二人は別れるor死別してしまいます)

最後の『ジュッ』というオノマトペが、曲の締めとして効果的な役割を果たしていますが、この音は別の意味もあったのです。

『ひとつ ふたつみっつ』と数え唄ではないにしても数を増やしていく言葉遊びのような歌詞の終わりを『ジュッ(10)』で締めた、とご本人も意図を語っていて、さすが國學院高校・大学と落研に所属していたさださんらしいオチをつけたんだな、と感心しきりでした。

私はこの曲はとてもお気に入りで(お気に入り曲、たくさんあり過ぎですが)、頭の中で映画のワンシーンのように想像してしまうのですが、線香花火をしている場所は、長らく彼女の家の縁側だと思い込んでいました。
ところが長崎では、花火はお盆の時期にお墓でするのが定番、と知ってビックリ!この曲はお墓の前だったのかもしれないですね。

そしてそう考えるとこの曲、「精霊流し」からの一連の流れ、シリーズとして書かれた曲と言っても良さそうですね。

この夏、大きな花火は見そびれそうなので、線香花火でも買ってきて庭でやろうかなあ……

でも私は人一倍、蚊に刺される体質(B型なのに)なので悩むなあ……。

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