#5 グレープ『精霊流し』

アーティスト

こんにちは。いよいよ明日からお盆ですね。お盆というと迎え火、送り火をそれぞれのおうちで焚いてご先祖さまや亡きご家族の存在とふれ合う日本の風習って素敵だなあ、と思うOJA-P(オジャピー)です。

これまでかぐや姫の名曲を4曲取り上げてきましたが、他にも大好きなアーティスト、大好きな曲があまたあるので、これからはご紹介していきたいと思います。今回はお盆という時季に真っ先に思い出す曲、グレープの『精霊流し』を取り上げてみました。

グレープはさだまさしさんと吉田政美さんによって1972年に結成されたフォーク・デュオ。活動期間は4年にと短かったものの、1991年には再結成していますが、この時の名前はなんと『レーズン』。
もう歳月を経て萎びてしまったからグレープではなくて干し葡萄(=レーズン)だろう、というさださんらしいウィットに富んだネーミングですね。しかしその後も『グレープ』名義で何回もコンサートをしています。
 
二人の結成に至る経緯はなかなかドラマティックで、さださんのバイオリニストになるという幼少からの夢と挫折、大学進学、バイト生活から病気、帰郷……と、このあたりのことは本人が著した自伝的小説や、菅田将暉さんが主人公(=さだまさしさん)を演じるNHKの土曜ドラマ「ちゃんぽん食べたか」でも描かれました。

そうして『雪の朝』でレコードデビューしたものの、3,700枚しか売れず、背水の陣で書いた曲がこの『精霊流し』でした。

精霊流しは、長崎県とその周辺でお盆に行われる伝統行事で、亡くなった方を追悼して家族が精霊船(しょうろうぶね)に魂を乗せて運ぶ行事のこと。

これは実際にさださんの従兄弟が海の事故で亡くなったことから思いついたんだそうです。(この従兄弟のお母さん、そして従兄弟の事故のことを書いた曲が「椎の実のママへ」という曲のモチーフにもなっています。シングル「親父の一番長い日」のB面で、8分46 秒という長い曲です)

イントロの哀愁を帯びたギターのアルペジオ、そして物悲しいバイオリンのソロが被って、歌が入る前から悲しさ全開です。この曲もリリースした当初はセールス的にもうひとつ、だったそうですが……東海ラジオの女性アナウンサーがこの曲をいたく気に入り、ご自身の番組でヘビーローテーションしたところ名古屋で火がつき、やがて全国でヒットしオリコン最高2位を記録したそうです。累計では130万枚のミリオンセラーを記録しました(売上枚数は諸説あり)。

その後のソロとしての活躍はご存じの通り、またいずれこのブログでもご紹介したいと思いますが、『神田川』の時と同じく当時のラジオ番組の影響力恐るべし、ですね。かくいう私も中学から高校時代にかけて深夜までラジオにしがみついてしまい、そのせいで背が伸びなかったのではないかと信じております(後悔はしておりません、キッパリ)。

すでにさださんの歌詞の表現力は素晴らしいものがありますが、

テープレコーダーからこぼれています

で聴く人に耳からの音を想像させ、

あなたの愛した母さんの
今夜の着物は浅黄色

と視覚的にも鮮やかに浮かぶ表現をして、

私の小さな弟が
何にも知らずにはしゃぎ回って

他の登場人物の仕草に、カメラで写すような、まるで短編映画のシーンを観ているような世界に誘う表現力は改めて読んでも思わず唸ってしまいます。

『精霊流し』の行事を知らないはずの、長崎から遠く離れた私たちにもお盆を、この鎮魂の行事をありありと感じさせる感性と言葉のマジシャン、さだまさしの本領が発揮された名曲でありましょう。

この曲がヒットして、私たち多くの人の心に残る感動を与えてくれるきっかけを作ってくれた、東海ラジオのアナウンサーさん(蟹江篤子さんという方だそうです)に心から感謝、です。そして不謹慎ですが、さださんがバイオリニストになっていたら、シンガーソングライターさだまさしは誕生していなかったかもしれないと考えると、その挫折にも感謝、してしまうのでした。

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