こんにちは!
この記事を書いている今日は9月15日、かつての『敬老の日』ですね。今では9月の第3月曜日と決められたので今年は21日なのですが、あと2年ほどで自分も該当する歳になることに気づき(今さら)、妙に身構えてしまったOJA-P(オジャピー)です。
前回までオフコースの曲を3曲ご紹介しましたが、今回は小田さんがソロになって6枚目のシングルにして、ソロ最大のヒットとなった名曲『ラブ・ストーリーは突然に』をご紹介します。

ご存じの方も多いと思いますが、この曲は1991年に放送され大人気となったフジテレビの月9ドラマ『東京ラブストーリー』の主題歌としてリリースされました。原作は当時、恋愛の教祖と呼ばれ人気を博した漫画家、柴門ふみさん。ドラマのヒロインは鈴木保奈美さんで相手役は織田裕二さんと、当時新進気鋭の俳優さんをキャスティング。このドラマのヒットによって二人は一躍ブレイクすることになります。
さて、小田さんに主題歌を依頼したのは、当時トレンディドラマの火付け役になったプロデューサーの太田亮さん。
当初、ドラマのスタッフサイドはオフコースの『Yes-No』や『君が、嘘を、ついた』みたいな曲を希望していたんだそうです。ところが小田さん本人にはそれが伝わっていなかったらしく、渡された曲は後に『FAR EAST CLUB BAND 』としてリリースされた曲の原曲だったんだそう。この『FAR EAST CLUB BAND』というバンドは、小田さんがソロとしてコンサートを行う時のバンドとして結成され、そのテーマソングといったポジションだったと思われます。
この曲も素晴らしい曲で、インパクトも充分あり、ドラマの主題歌としてももってこいだと個人的には思うのですが、大多さんにはどうやら物足りなかったようでした。悩んだ挙句、先の2曲のような曲が本当はよかったことを小田さんサイドに伝えました。それが小田さんの耳に入ることとなり、それならば!と奮起して一から作り上げたのが
、あの『ラブ・ストーリーは突然に』だったのでした。
小田さんはこの時、三連のイメージが頭にあって(三連符ですね……結果的にこの曲では、サビの『あ〜の〜ひ』『あ〜の〜と』『き〜あ〜の』『ば〜しょ〜で』という三連符のリズム)、それを形にすることであの印象的なサウンドが生まれたのでしょう。歌詞の言葉を見てみましょう。
あの日 あの時 あの場所で
君に会えなかったら
なんとなく、アニメじゃない方の、ケータイがあったら成立しなかったドラマの方の『君の名は』を彷彿としてしまう内容ですが、文字面ですと、割とシンプルでありがちな表現で流してしまいそうなところを、メロディーとリズムの力によってドラマティックさを纏うことができたのではないかと思います。
歌詞の話が出たので、ここで全体のストーリーも少し分析してみたいと思います。
主人公はちょっとシャイな、きっと自分にあまり自信が持てない男性。それがサビにあるように、運命的な出逢いをして、恋に落ちてしまいます。『あんまり素敵』な君に『好きと言えない』僕。
自信のなさは、こんなフレーズにも表れています。
誰かが甘く誘う言葉に もう心揺れたりしないで
切ないけど そんなふうに 心は縛れない
(小田和正『ラブ・ストーリーは突然に)
他の男に心を奪われる不安はあるけれど、それを止める手立てはないよね、という諦めが感じとれます。
ところが2番の後の大サビパートで、
今 君の心が動いた 言葉止めて 肩を寄せて
僕は忘れないこの日を 君を誰にも渡さない
(同)
相手が自分へと気持ちが向いた瞬間を確信したのでしょうか。そのことの感動と共に、もう決して渡さないという強い決意が滲みます。
なので、先ほどの『心は縛れない』のフレーズは姿を消し、
誰かが甘く誘う言葉に 心揺れたりしないで
君をつつむ あの風になる
(同)
1番のサビと打って変わって、もう心を縛る気マンマンです(笑)。
しかも今回の『心揺れたりしないで』は、しっかり『ゆ・れ・た・り・し・な・い・で』と念を押すように溜めて歌っていますね。
このように、一人称の「僕」が、曲が進むにつれ気持ちが確固たるものになってゆき、大サビで相手の心を確信して自信のある男に成長してゆく、一曲の中にそんなストーリーが描かれている、なかなか凝った作りになっています。そして例によって小田さんらしい、あまり具体性を持たせないシチュエーションの歌詞が、ドラマの登場人物にも投影し、結果的に感情移入できるという実に戦略的な歌詞になっているのでは、と私は感じました。
一方ででサウンドに目を向けますと、この曲のヒットに欠かせないのが、イントロどアタマの『チュクチューン!』というエレキギターのカッティングですね。これはメンバーのギタリスト・佐橋佳幸さんが生み出したフレーズでした。小田さんが最後までイントロにだけ納得していないことを伝えたのがレコーディング合宿の部屋飲みの時だったそうです。そこであーだこーだとミーティングしていたところ、佐橋さんの頭に降ってきたのがこのイントロで、閃いた後すぐにスタジオに戻って演奏してみたそうです。
様々なプロセスを経て完成した『ラブ・ストーリーは突然に』ですが、ここでもうひとつクリアしなくてはいけない問題が出てきました。
レコードとしてリリースするにあたり、A面は第一生命のCMタイアップが決まっていた『Oh!Yeah!』で、『ラブ・ストーリー……』はB面の予定でした。
しかし、主題歌にするドラマのフジテレビとレコード会社はやはりA面で売っていきたい。義理堅い小田さんは、後から決まった事情で変えるのは嫌だ……と何度も話し合われた結果、両A面ということで決着したのでした。
一見理知的で、感情には左右されずに判断を下しそうな小田さんが実は義理人情に厚いことが偲ばれるエピソード、なんか素敵ですね。
そしてご存じのように大ヒット。オリコン週間1位、年間でも1位、売上270万枚という、当時CDとしては最高の売上を記録しました。(レコードも含めると『およげ!たいやきくん』『女のみち』に次いで当時3位)
音楽が完成するまでには、いろいろと違った立場から異なる要望や意見があり、それを納得させつつ収斂して行かなくてはならないと思うのですが、様々な相手の要望に応えさらにその上を行く、より高い結果を出すというのはなかなかできることではありませんよね。
そこを成し遂げてしまう小田さんの懐の深さ、それを支えるスタッフとの信頼感……そんなものが集約して、うまくピースがハマって(敢えてハメて?)実現した大ヒット曲、そんな風に感じました。
《追記》
この原稿を書き終えた後、小田さん関連の資料を検索していたところ、文藝春秋から小田さんの壮大なドキュメンタリーが2023年に出版されていたことが判りました。
追分日出子・著『空と風と時と 小田和正の世界』です。
うわ、知らなかった!さっそくAmazonで取り寄せました。分厚い!なんと626ページ。お値段も2,900円。
でもスゴイです。小田さんのご両親の生い立ちから、小田さん自身やお兄さんと音楽の関わり、もちろんオフコース時代やソロになってからの知られざるエピソードが網羅されています。実はまだ、パラパラとめくってみただけなんですが……。読むのが楽しみです。




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