こんにちは。9月に入って朝晩は気温も下がり、過ごしやすくなりましたね。でも台風や前線の影響で雨が降りやすく、線状降水帯などでの災害に気を揉んでいるOJA-P(オジャピー)です。
前回はオフコースの『秋の気配』をご紹介しましたが、今回はオフコース最大のヒット曲にして、代表曲にもなった『さよなら』を取り上げてみたいと思います。
『秋の気配』のリリースが1977年、通算11枚目のシングルでしたがこちらは2年後の1979年、通算17枚目のシングルです。
7枚目のシングル『眠れぬ夜』で、オリコン48位に入るヒットを記録したオフコースは、その後79年にギターの松尾一彦さん、ベースの清水仁さん、ドラムスの大間ジローさんをサポートメンバーに迎え、15枚目のシングル『愛を止めないで』をリリース。オリコン31位のスマッシュ・ヒットを記録します。
そして時は満ち、『さよなら』は3人が正式加入して5人体制になった同年12月にリリース、オフコース史上最高のオリコン2位、71.7万枚を売り上げる大ヒットになりました。
それまでのスマッシュ・ヒットによって少しずつ認知度を上げ、大ヒットの下地が整っていたこともありますが、やはり曲そのものの完成度がヒットの大きな要因だったと思います。
作詞・作曲の小田さん自身も語っていますが、ヒットを求め、意識し苦しみ抜いて作った曲だったそうです。歌詞も最初は幸せな愛の歌だったものが、レコーディングの前日サビのメロディーに「さよなら、さよなら、さよなら」という言葉が浮かび、プロデューサーも「いいじゃない」と賛同して一転、別れの歌に。ひと晩で歌詞を書き直してレコーディングしたというエピソードが残っています。
男女の別れ。これは前回ご紹介した『秋の気配』と同じく、男性から別れを切り出すシチュエーションですが、こちらは「やがて雪になって」と歌っていますから、季節がもう少し深まっているかもしれません。
冒頭から、
もう終わりだね 君が小さく見える
僕は思わず君を 抱きしめたくなる
(オフコース『さよなら』)
という衝撃的なワードから始まるこの歌は、この後に続く、
「私は泣かないから このまま一人にして」
(同)
という女性の台詞で、男性の意志で別れを切り出したことが暗示されています。
では、男性には別に好きな女性ができたのでしょうか?
この問いにはNOと言えそうな根拠が、この後のサビの部分で明かされます。
愛したのはたしかに君だけ
そのままの君だけ
どうやら『秋の気配』と同じく、女性に自分から別れを告げる男性という構図だと思われます。
この曲の一番の聞きどころは、小田さん本人に降りてきたという、
さよなら さよなら さよなら
というサビの連呼。やはりここが秀逸だと思います。
『さよ』(D=レ)から『なら』(B=シ)の音程の上がり幅が大きく、とてもドラマティックな効果をもたらしています。
余談ですが、そもそも小田さんは男性としてはとてもキーが高く、普通の男性が出せる一番高い音がG(=ソ)なのに対して小田さんはその上のC♯(=ド♯)も出しているという、これは驚異的な高さです。(『YES-YES-YES』)
歌詞のドラマティックな別れの情景にサビのキャッチーなメロディーライン、そして小田さんの澄んだ歌声。これには当時高校生だった私もすっかり魅了されてしまいました。
加えて、5人体制になったことによるアレンジの変化も大きいと思います。
それまでのフォークソング、アコースティック寄りだったアレンジにロックのテイストを加えたことにより、エレキギターやシンセサイザーの厚い音を重ねて、よりハードでドラマティックな音作りに生まれ変わりました。洋楽は詳しくない私ですが、アメリカのロックバンド、ボストンとかイーグルスのサウンドをかなり参考にしたのでは、と思っています。
特にイーグルスの『ホテル・カリフォルニア』を聴くと、イントロのアコースティックギターのスリーフィンガーは『さよなら』のA’部分(わたしは泣かないから〜)のスリーフィンガーに、また『ホテル・カリフォルニア』のエンディングのツインリードギターは『さよなら』間奏のツインリードギターなどに、その痕跡を認めることができると思います。
いきなり降ってきたサビのワード(さよなら)、そしてバンド化してロックテイストに進化を遂げたアレンジ、シングルヒットを出したいという小田さんの強い情念が全て揃って誕生した奇跡の名曲が、この『さよなら』だと考えています。
余談ですが、私のイチ推しフォークグループに「ふきのとう」という北海道出身のデュオがいました。ふきのとうのデビュー曲は『白い冬』という曲で、これがオリコンチャート14位と一番売れた曲なのですが、今回のオフコース『さよなら』の歌詞に、
もうすぐ外は白い冬
というフレーズがあるんですね。この曲をリリースするにあたって、オフコースの事務所からふきのとうの事務所にこのフレーズを使っていいかという確認があった、という話を以前聞きました。
事務所の方の判断かもしれませんが、小田さんや鈴木さんの真面目さが現れているような気がして、個人的に好きなエピソードのひとつです🎵
そして私はといえば・・・
この曲のサビの分厚いコーラスワークにすっかり魅了&幻惑されて、
♬さよならぁー、さよならぁー、さよならーぁぁー♬
の最後の「ぁぁー」もメロディーだと信じて、ずっとカラオケで歌っていたのでした。
きっと私だけではないはず. . .(涙)。



コメント
歌い出しの「もう終わりだね 君が小さく見える」、伊勢正三さん「雨の物語」の歌い出し「化粧する君の、その背中がとても小さく見えてしかたないから」と並べて、二人の関係や距離、感情の現在過去未来を考えてみると、なかなか楽しいですよ。
サビの三連呼、オフコースをほとんど聴いてこなかった僕は、(偶然ながら)ついひと月ほど前に何気なく見ていたYOUTUBEで(恥ずかしながら)47年経って初めて気づきました。「えっ!?『ぁぁ』ってコーラスじゃん!?」。「えっ!? 日曜洋画劇場の淀川長治じゃん!? インターバルもほぼ同じじゃん!?』。そして「小田さん、すげーじゃん!?」でした。淀川さんが3回言ったのは「(番組をご覧いただいたお茶の間の)お父さん、さようなら。お母さん。さようなら。お子さま。さようなら」という思いだったらしいですが、小田さんは、「君」との過去・現在・未来に「さようなら」させたのかもしれないなと思ったので。
長文失礼
コメントありがとうございます。
おお!「雨の物語」でも彼女の背中が小さく見えていたんですね。あんなに聴いていたのに気づかなかった・・・。
でも正やんは「背中が小さく見える=まだ愛している」、小田さんは「君が小さく見える=もう終わり」人によって感性が違うのですね・・・それまでのプロセスもでしょうけれど。
「ぁぁ」がコーラスじゃないと思っていた同志、さらにお一人様追加!ありがとうございます。
淀川さんと同じさよなら×3ってとこまでは思いましたが、インターバルが同じだと指摘された方は松永さんが初めてかと。すごい発見です。
そして淀川さん、小田さん、それぞれが3回言った理由・・・素晴らしいです。目からウロコでした。
とっても学び多いコメント、ありがとうございます。
「さよなら」でオフコースが明確に「売りに行こう」とした姿勢は、歌詞や作曲、曲の切り口だけに表れているのではないと思います。
むしろ、その本気度が最もよく表れているのは、サウンドそのものです。
第一に、冒頭から耳をつかむアコースティックギターのフレーズです。印象的でありながら、聴いた人がすぐ覚えられるほどシンプルで、コピーもしやすい。
第二に、エレキギターのソロです。どこか「ホテル・カリフォルニア」を思わせるような、洋楽的で格好いいリフが大胆に入っています。
第三に、レコードならではの分厚いコーラスです。
第四に、サビで展開される3声の美しいハーモニーです。単に主旋律を支えるのではなく、曲そのものの華やかさと完成度を一段引き上げています。
そして第五に、そのコーラスとハーモニーを、小田和正と鈴木康博の二人だけで作り込んでいることです。ここには、ライブでの再現性よりも、まずレコードとして最高の音を作るという意志が感じられます。
「売れる曲を作ろう」という意図を、歌詞やメロディーの分かりやすさから説明する人もいます。しかし私は、それ以上に、この五つの音作りにこそ、オフコースが「さよなら」で本気で勝負に出たことが表れていると思います。
つまり「さよなら」は、いい曲を書いたから売れたのではありません。
売るために、音の細部まで徹底して作り込んだ曲だったのだと思います。
コメントをありがとうございます。
本当にその通りだと思います。
そして私の気づきのないところも指摘いただきありがとうございます。
エレキのソロは鈴木さんだと思いますが、松尾さんが加わりエレキに持ち替えたことで、それまでの洋楽の見識が開花したリフ、という気がしています。
当時、ノンタイアップであそこまでヒットしたというのは、計算の上に成り立った戦略勝ちということですね。
さすが理系頭脳の二人、と感服します。