こんにちは。猛暑が続くな〜、と額の汗を拭いながらふとカレンダーに目をやると、もう立秋になってしまった!そこから先は暑中見舞いを残暑見舞いに変えなくては……と時の流れの速さに狼狽えているOJA-P(オジャピー)です(出す宛は今のところありませんが)。
さて、フォークソングが特別好きでなくても、一定の年齢以上の方は知っている名曲のひとつとして名前が挙がるのが『22才の別れ』。哀愁を帯びた、跳ねるようなアコースティックギターのピッキング(スリーフィンガーという奏法です)に、泣きのリードギターのフレーズが印象的なあの曲です。スリーフィンガーを体得しようとする新米ギタリストが必ずトライする曲といっても過言ではありません。
作詞作曲は伊勢正三さん(以降、正やんと呼ばせていただきます)。南こうせつさんの高校(大分舞鶴高校)時代の音楽部の後輩で、2学年下ということです。
※ものすごく細かいことなのですが、こうせつさんは1949年2月生まれ、正やんは1951年11月生まれとあるので、3年間の高校生活では入学と同時に卒業の入れ違いになってしまうのでは?という疑問が消えないのでした。分かる方いらっしゃいましたらご教示ください。
第二期かぐや姫を結成するにあたって、後輩の正やんを誘ったこうせつさんは、『神田川』の大ヒットで人気グループになったかぐや姫の次回作のアルバム(『三階建の詩』)で、他のメンバーも曲を作ろうよ!と呼びかけたといいます。これは、メンバーの印税ができるだけ公平に行き渡るように……というこうせつさんの心遣いだったそうで、このエピソードを聞いた私は改めてその人間性に感服したのでした。
そして、それまで作詞では何曲も提供していた正やんも、ついに曲を作ることに。そこで早速作った曲がかの名曲『なごり雪』と、もう一曲の二曲だったそうです。『なごり雪』は本人も会心の出来だと思ったところが、予想に反して反応がイマイチだったので、家に帰ってひと晩で作ったのがこの『22才の別れ』だったと。今ではフォークソングの代表曲と言ってもよいなごり雪が正当に評価されていたら、『22才の別れ』はこの世に誕生していなかったのかもしれませんね。ヒヤヒヤものです。
しかし、生まれて初めて作ったとは思えない曲の構成力と胸に迫る哀愁のメロディーラインは、やはり生まれ持っての才能の成せる技なのでしょうか。
そして、さらにそれまで評価の高かった正やんの詞の世界、この作品でも見事に開花させています。
私には 鏡に映った
あなたの姿を見つけられずに
私の目の前にあった幸せに
すがりついてしまった
(『22才の別れ』かぐや姫)
5年間つき合って、その先の未来が見えない彼女は、彼に別れを告げてまったく別の男性の元に嫁いでしまう……これもやはり当時の時代背景、お見合い結婚から恋愛結婚への過渡期だったことや『神田川』に代表される同棲ブームを色濃く反映しているシチュエーションを鮮やかに切り取って共感を得たのでしょうね。
そして、イントロのキャッチーなアレンジも話題になりました。冒頭で触れたスリーフィンガーという奏法は、カントリーミュージックのリズムを演出する、親指・人差し指・中指の3本で弾くスタイルなのですが、しかも軽やかな弦の響きにお気づきでしょうか?
これは、ギターの弦自体の張り方を変えた『ナッシュビル・チューニング』という方法です。細かいことは省きますが、通常太い弦を張るところも細い弦にして、あ1オクターブ高いチューニングをすることで、軽やかな、キラキラした音色を出すことができるんですね。
名前の由来は、アメリカの都市ナッシュビルはカントリーミュージックの本場で、レコーディングスタジオも多くあり、ここで生まれたスタイルだからということです。この『22才の別れ』に採用した張本人は、日本でギターの神様、大先生などとも呼ばれる石川鷹彦さん。レコーディング当時、マイク真木さんのレコーディングも同時に行っていて、アメリカの有名なカントリーバンドのギタリストからこの奏法を教わったとのこと。
日本では初めての試みだったそうで、あの弾き方は何だ?と話題になり、それから広まったということです。今でも『ナッシュビル・チューニング』と言えば『22才の別れ』と言われるほどなんですね。
ちょっと深掘りしてしまいましたが、これだけの名曲がかぐや姫時代にはアルバムの中の1曲に過ぎず、解散後に正やんが大久保一久さんと結成したフォーク・デュオ『風』のデビューシングルまで待たなくてはならなかったのは何故か?
ひとつは、こうせつさんが「この曲はいずれ解散後に正やんが満を持してシングルカットした方がいい」と言った説、もうひとつはこうせつさんが『神田川』の後のシングルとして強く推したものの、レコード会社はあくまで『神田川』路線の『赤ちょうちん』『妹』を通した、という説があり、今となっては真相は藪の中になっていそうです。

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