#16 母に捧げた励ましの唄〜ふきのとう『春雷』〜

アーティスト

こんにちは!
ここのところ穏やかな晴天が続いていて、爽やかな秋の空を眺めながら一句捻り出そうとするもののなかなか頭が回らないOJA-P(オジャピー)です。

ふきのとうの紹介も今回で4曲目。他にもまだまだ名曲が目白押しですが、いったん区切りにしてまた後日気まぐれにご紹介したいと思います。あ、山木さん細坪さんソロの曲も素敵な曲がたくさんあるんですよ。

今日は、前回ご紹介した『風来坊』を上回り、デビュー曲『白い冬』に次ぐ第2位のヒットになった『春雷』を取り上げたいと思います。

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この曲は1979年2月に13枚目のシングルとしてリリースされ、オリコン最高22位、9.4万枚を売り上げました。

イントロのドラムのフィルインに続いて鳴るティンパニの響きは、まさに雷鳴をイメージしているかのようです。すると続くアコースティックギターは稲妻か……そこから差し込むエレキのツインギターが運命を予言するかのように空気を切り裂いて、歌へバトンを渡します。

突然の雷が 酔い心地 春の宵に
このままじゃ夜明けまで 野ざらしずぶ濡れ

春の雷に 白い花が散り
桜花吹雪 風に消えてゆく
(ふきのとう『春雷』)

この後歌詞は、2番では肩を組み涙ぐんで別れた友を想い、3番では散りゆく桜の花にこの世の運命(さだめ)に想いを致しています。

しかし山木さん、この歌詞を初めて作った時はラブソングだったと告白し、著書の中で歌詞の変遷を紹介しています。

最初の曲は好きな女性に明日告白しようという歌で、メロディーもまったく別。

次の曲は、タイトルもまったく別で歌詞も恋が終わる場面を描き、メロディーは現在の『春雷』。

そしてこの曲をマネージャーに聴かせたところ、曲はとても良いから、歌詞を書き換えてみないかと提案したそうです。

そこでタイトルを春雷に戻し、最初の歌詞を、当時病を得ていたお母さんを励ます気持ちを込めて書き換えました。照れ屋の山木さんのことですからストレートな表現を避けたのでしょうし、何よりお母さんに勘づかれてしまいます。でも、最後のサビの部分は、間違いなく最愛の母親に対する心の叫びだったことでしょう。

春の雷に 散るな今すぐに
桜花吹雪 命続くまで
(ふきのとう『春雷』)

ふきのとうはこの曲で、シングルリリースのひと月後に歌番組(夜のヒットスタジオ)に出演していますが、山木さんはこの時司会者にそのことを触れられそうになり、背筋の凍る思いをした、と後に回想しています。

ダイナミックでドラマティック&スリリングなアレンジは、『白い冬』『風来坊』でおなじみ瀬尾一三さんの手によるものです。ヴォーカルは細坪基佳さん。ベースの跳ねるようなラインやエレキギターのツインリード(オフコースの『さよなら』でも紹介しましたが、カッコいいですよね。ツインギター好きです)、3番に入る前の間奏で転調するところ(しかも1音上がったまま歌に突入)など、ヒットする要素がこれでもかと注入されています。

これでもしドラマ主題歌のタイアップなんて話が来ていたら、ミリオンセラーも夢じゃなかったかも……なんて妄想を描いてしまったり……うん、いかんいかん。

後に山木さんはソロになってからこの曲をセルフカバーしていますが、スローテンポで切なげなアコースティックギターの(スリーフィンガー)演奏になっていて、おそらく最初に意図していたのはこんなイメージだったのだと思います。メジャーでシングルをリリースするとは曲にそういうお化粧を施すこと、というのは山木さん自身もう分かっていたでしょうが、やはりアレンジ次第で曲のイメージはガラッと変わるものだなあ、と改めて私も感じ入ったのでした。

春の雷……普段はあまりお目にかかることは少なかったのですが、今年は地球温暖化や異常気象の影響か何回か遭遇しました。そこに、桜花吹雪。曲を聴いているだけで景色が鮮やかに立ち上がってきます。雷と桜、本来違う季節に見られる風景が同時に繰り広げられる、妙。

個人的な話しで恐縮ですが、在職中、山梨で様々なイベントの運営を担当していました。
主なイベントの中に山梨では最大級のお祭り『信玄公祭り』というものがあります。これは武田信玄公の遺徳を偲ぶお祭りで、メインイベントの『甲州軍団出陣』では、1000人を超える甲冑武者が甲府市内を行進するというもので、これはなかなか壮観な風景です。

基本的には信玄公の命日である4月12日前の週末に開催され、運がよければ桜満開、花吹雪の中の勇壮な出陣が見られます。ところが今からどれほど前でしょうか、記憶が曖昧になってしまいましたが……桜満開の中行進する軍団の上に、雪が降りはじめたのです。それも桜の花や枝が白く隠れるくらいに。

このミスマッチは普段ありえないだけにいっそう美しく、心に刻まれました。今でも鮮やかに想い出す景色です。

話は戻ります。さすがに山木さん、この曲の中で雪を降らせることはできなかったと思いますが『春雷』も雷が鳴り、嵐を呼び、桜が散る。そんな景色を思い浮かべてこの曲を聴くと、その時の主人公の、友の、大切な家族の、心象風景までもが伺えるようです。

多くのフォーク歌手、フォークグループがきら星のように輝いていた’70〜’80年代、ふきのとうの最大の魅力は、男女の恋愛や別れを歌いながら、大自然や風景、季節の移ろいを一貫して描き続けたことなんだろうな、と私はこの曲で、一層その想いを強くするのでした。

残念ながらこの曲を最後にふきのとうのシングルがオリコン50位以内に入ることはなくなってしまったのですが、その後も12年にわたって活動を続け、日比谷野音や日本武道館でのコンサートを敢行、私たちの記憶に刻まれるいくつもの名曲を残してくれたことには感謝しかありません。

おそらく再結成の可能性は限りなくゼロに近いと思いますが、いつの日か……本当に引退直前の最後の最後で構いませんので、お二人が同じステージに立ち、あの名曲の数々をハモる日を願って止みません。

4回に渡ってお送りした『ふきのとう』特集。いかがでしたでしょうか。

いろいろ異論もあるかと思いますが『白い冬』『風来坊』『やさしさとして想い出として』『春雷』この4曲を一回のコンサートで聴くことができれば、私たちファンはかなり満足してコンサート会場を後にすることができた、そんな曲たちでした。

ふきのとうの曲の紹介はここでいったん中締めといたしますが、いずれまた、さまざまなアーティストの名曲を紹介する合間を縫って、しれっと布教していきたいと企んでいます(笑)。

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